国が認めた借金救済制度~怪しい広告調査隊~

国が認めた借金救済制度、嘘はついてない 怪しい広告調査隊

世の中にはびこるWeb広告。信頼できる組織が出稿しているものもあれば、どこの誰が出しているのか分からない、真偽不明な広告があるのも事実です。

皆さんは、こんな広告を目にしたことはありませんか?

数百万円あった借金が、国が認めた借金救済制度のおかげでゼロに。きっかけはLINEで30秒でできる借金減額診断だと言います。

果たしてこの広告は本当なのでしょうか。怪しい広告調査隊、参ります。

広告は何かしらの利益が出るから出している

怪しい広告について語る際に欠かせない視点が、広告は何かしらの利益が出るから出しているというものです。

お菓子の広告を出すのは、そのお菓子を買ってもらいたいからです。政府が闇バイトへの注意喚起をするCMを流すのは、闇バイトによる犯罪行為を減らせば政府にもメリットがあるからでしょう。

このように、広告は広告主が何らかの利益を得るために出すものです。広告主に直接的な利益がないのに広告を出すのは、オタクが出稿する応援広告くらいだと言えます。

それを踏まえると、今回取り上げている借金救済制度の広告も、広告主が何かしらの利益を得るために出しているものだと考えるのが自然です。

一体どうやって利益を得ているのかが分かれば、この広告の正体が見えてきます。

国が認めた借金救済制度は実在する

まるで都市伝説のような言い方ですが、国が認めた借金救済制度は実在します

ただし、国が「借金救済制度」という言葉を使っているわけではなく、別の名前がついている制度を勝手に借金救済制度と呼んでいるだけです。

このような「国が実際にやっている制度を別の言葉で言い換える」というテクニックはWeb広告でよく見られる常套手段なので、覚えておくといつか役に立つかもしれません。

「国が認めた借金救済制度」改め債務整理

広告で述べられている借金救済制度は、おそらく債務整理を指していると推測されます。

債務整理とは、借金を払うのが難しくなった人を対象に借金の減額や免除をする制度のことです。主なものには以下の3つがあります。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

任意整理と個人再生は聞いたことがなくても、自己破産は聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。

これら3つの制度は、借金の減額または免除ができる制度であり、これ自体に違法性は全くありません

これらがどんな制度なのかは後述します。

「国が認めた」はちょっと微妙なライン

「国が認めた」と広告では言っていますが、そもそも個人再生や自己破産は国が法律で定めている制度なので嘘はついていません。ただの宣伝文句ですね。

ただし、任意整理は厳密に言うと法律で定められた制度ではないので「国が認めた」と言い切るのは多少無理があります。

かといって違法ではないので、「国が認めた」と括っていいのかどうかは微妙なラインです。嘘はついてないんですけどね……。

借金救済制度の広告を出すわけ

では、どうしてわざわざお金をかけてまで借金返済制度の広告を出しているのでしょうか。

端的に言えば、借金の減額に成功した人からお金を貰うビジネスだからです。

債務整理は自分でもできますが、法律の専門的な知識が必要になるうえに手間がかかるため、自分でやる人はあまり多くありません。

では多数派の人はどうやって債務整理をするのか、その答えが弁護士や司法書士などの専門家に依頼することです。

借金を減らしたい人が専門家に依頼し、その対価として報酬を支払う。このお金の流れがあるからこそ、借金救済制度の広告がWebに放流されているのです。

専門家が出している広告ではないかもしれない

とはいえ、国が認めた借金救済制度の広告は専門家が出しているものだとは限りません。

債務整理もアフィリエイトが存在するからです。

アフィリエイトとは、アフィリエイターが紹介したサービスや商品が購入されると報酬が支払われるというものです。

実際に「債務整理 アフィリエイト」で検索すると、複数の弁護士法人や司法書士事務所がアフィリエイトプログラムを提供しているのが確認できました。しかも、「1人紹介すれば1万円貰える高単価の案件」という文章も掲載されています。

したがって、国が認めた借金救済制度の広告は、借金を減らしたい人を専門家に紹介して報酬を得たい人が出している広告である可能性があります。

この時点で、「借金が全額免除になるかもしれない!」と飛びつくのが少しリスキーだということが分かってもらえるのではないでしょうか。

借金は全額免除になる? 3つの債務整理

前述のとおり、債務整理自体は違法な行為ではなく、借金の減額や免除を受けられる可能性があります。

では、債務整理とは具体的にどのような制度なのでしょうか。主なものを紹介します。

借金がゼロに! 自己破産

自己破産とは、法律上の借金の返済義務を免除してもらう手続きです。「よく知らないけど自己破産したら終わりって感じ」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

財産がなく支払いができないことを裁判所に認めてもらえば、借金がゼロになります。借金の悩みがなくなって新たな人生のスタートを切れるので、実は自己破産は終わりではなく再始動です。

借金がゼロになるというメリットは大きいものの、その分デメリットも大きくなってしまいます。家や車など高価な財産が没収されたり、いわゆるブラックリストに掲載されてローンが組めなくなったりクレジットカードが使えなくなったりします。

この「ローンが組めなくなる」というのが厄介で、スマートフォンの分割払いもできなくなるため、債務整理をすると想像以上に生活の自由度が下がります。

メリットだけでなくデメリットも大きい自己破産は、適している人もいれば適していない人もいる点に注意が必要です。借金の額によっては、個人再生や任意整理が適しているケースもあります。

借金を大幅減額! 個人再生

個人再生とは、大幅に減額された借金を3年または5年かけて返済する手続きです。

もう返済ができない状態の自己破産に対し、「まだ大丈夫だけど今後は返済できなくなるかもしれない」という状態だと裁判所に認めてもらえれば借金が減額されます。

どれだけ減額されるかは借金の額などによりますが、借金が500万円超1,500万円以下の場合は80%減額されます。自己破産とは異なり、財産の没収もありません。

個人再生のデメリットは、自己破産と同様にローンが組めなくなったりクレジットカードが使えなくなったりすることです。また、既に購入した財産は没収されませんが、ローン返済中の財産は没収される可能性があります。

借金を減らしたいけれど家や車などの財産は残したい人や、自己破産すると事業が継続できない人などに向いています。

利息分を減額! 任意整理

任意整理とは、利息のカットや長期分割払いの交渉をカード会社などとおこない、日々の返済額を減らす手続きのことです。

自己破産と個人再生は裁判所に認めてもらう必要がありますが、任意整理は裁判所で手続きをする必要はなく、カード会社などお金を借りている相手と直接交渉します。

お金を借りたときには、借りた額より多い金額を返さなければなりません。この差額が利息であり、利息はお金を借りる期間が長くなればなるほどどんどん増えていきます。

たとえば、50万円を金利18%で借りて毎月1万5,000円ずつ返済すると、返済にかかる期間は3年11か月、総返済額はおよそ67万円です。50万円だけなら2年10か月で完済できますが、利息があるとそうはいきません。

カードローンの返済は、まずは利息分に充てられ、残った分で元の借金が減らされる仕組みが一般的です。そのため、利息が増えすぎると返済しても利息分しか払えず、元の借金が減らなくなってしまいます。

このような状況に追い込まれてしまった人の場合、任意整理で利息をカットできるのは大きなメリットです。

とはいえ、任意整理にもデメリットはあります。他の債務整理と同様にローンやクレジットカードが使えなくなるので、しばらくの間は家や車など高額な買い物ができないかもしれません。

また、利息の金額によっては思ったより返済額が減らなかったり、会社との交渉なのでそもそも和解が成立しないケースもあるのがデメリットです。

借金は結局チャラになるのか

ここまでで紹介した債務整理の特徴を踏まえると、広告で言われている「借金が全額免除になった」は自己破産のことではないかと推測されます。

自己破産はたしかに借金を全額免除できる手続きですが、デメリットも大きく、借金に苦しんでいる全ての人に向いている債務整理ではありません。

任意整理で返済できる人がもし広告を見て相談した場合、良識のある一般的な専門家であれば任意整理を勧めるでしょう。そうなった場合、相談した人は「広告では全額免除と言っていたのに」と思うかもしれません。

つまり、「借金が全額免除になった」というフレーズは、嘘ではない一部の人だけにあてはまるものであり、誇大広告と呼んでも差し支えないレベルだと言えます。

大抵の人は借金が減額になるだけで免除にはなりませんが、自己破産した人であれば全額免除になるため嘘はついていないという、どうにも腑に落ちないフレーズです。

結論

嘘はついていないが、さすがに大袈裟すぎる。こういうキャッチーなフレーズに飛びついてはいけない。

借金に困ったら広告を利用すべき?

国が認めた借金救済制度は違法性のない制度であり、借金が原因で苦しんでいる場合には適切な手段を取れば苦しみから解放される可能性が高いです。

では、借金で困ったら、国が認めた借金救済制度の広告を利用して債務整理をしていいのでしょうか。

利用してもいいけど見極めは必要

結論から言えば、広告を利用すること自体は問題ないものの、広告で紹介されている専門家に相談するべきかどうかの見極めは必要です。

まず注意したいのは、本物の弁護士事務所や司法書士事務所かどうかという点です。世の中には弁護士などの専門家をかたって人を騙す輩がいるので、事務所の名前や弁護士の名前などで検索して本物かどうかを確認しましょう。

その上で欠かさずに確認してほしいのが、費用が明確かどうかです。

債務整理の費用は弁護士事務所や司法書士事務所のホームページに掲載してあるケースが多いので、どの程度の費用がかかるのかを把握しておきましょう。ここで把握ができない場合は要注意です。

特に、「〇〇万円~」とだけ記載されていて上限が書かれていない場合は、やめておいた方がいいでしょう。

最後に確認したいのが、費用が高すぎないかどうかです。

債務整理の費用は自由に決められるので、事務所によっては倍近い差が出ることがあります。借金に苦しんでいるんだから、出費はなるべく抑えたいものです。

しかし、思い出してください。国が認めた借金救済制度の広告を出すときには、広告料がかかります。広告料として支払われたお金は、利用者が支払う報酬に上乗せされると考えるのが妥当ではないでしょうか。

そう考えると、借金に苦しんでいる人ほど広告を使わない方がいいという矛盾が生じてしまいますが、インターネット上の広告では往々にしてあることです。

本当に困っている人はどうすべきか

借金が苦しくて本当に困っている人は、自分で信頼できる専門家を探して相談することをおすすめします。

費用が明確で高額すぎない弁護士事務所や司法書士事務所を選んで相談しましょう。

事務所によっては無料で相談できることもあるので、まずは相談してみるというのも手です。

また、日本司法支援センターの「法テラス」ではトラブル解決のための情報を無料で提供しているので、何から手を付ければいいか分からない場合は法テラスに相談するのもおすすめです。

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今回の調査報告:確かに実在はするが飛びついてはいけない

今回取り上げた怪しい広告は、「国が認めた借金救済制度」というフレーズこそ国が作ったわけではないものの、広告を利用すると繋がるサービスは国の制度など違法性のないものでした。

それに対して、広告は「借金が全額免除になる」などの誇大表現が見られ、デメリットについての記載が一切ないケースが見られました。

広告の表現に惹かれても、そこですぐに飛びつくのではなく、「本当にこの広告を利用していいのか」と思って思いとどまれるリテラシーが求められます。

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