昨今ニュースを騒がせている関税。そういえば社会科の授業で習ったような気がしますが、一体どんなものだったのか、私たちの生活にどんな影響があるのかを思い出せない人もいるのではないでしょうか。
ニュースでよく見る今こそ、関税のことを知っておきましょう。いつか役に立つかもしれませんし、役に立たないとしてもニュースで言ってることは分かるようになるはずです。
関税とは
関税とは、物の輸出入にかかる税金のことです。

関税がかかる物は、それぞれ税率が決まっています。たとえば、税率が10%で100万円の物を輸入した場合、単純計算で110万円になります。
輸入した物だけでなく輸出する物にも関税があり、それぞれ輸入関税・輸出関税と呼ばれますが、単に「関税」と呼ぶ場合は輸入関税を指すのが一般的です。
実際に、日本では輸入関税のみを制度として設けていて、輸出関税の制度はありません。この記事でも、以降「関税」とだけ表記した場合は輸入関税のことを指します。
関税の役割
関税には、大きく分けて2つの役割があります。
自国の産業の保護
現代の関税の主な役割は、自分の国の産業を保護することです。
たとえば、この国で作られたロボットが1台100万円で売られているとしましょう。この国はまだロボット作りを始めたばかりですが、これから頑張ってたくさんロボットを作りたいと思っています。
しかし、ロボットが欲しい国民は「隣の国から1台80万円のロボットを買えばいいのでは?」と思いつき、隣の国のロボットを購入します。
この国で100万円で売られているロボットと、隣の国で80万円で売られているロボットは、性能にそれほど差がありません。となると、この国で作ったロボットは売れず、ロボットを作る会社は潰れてしまいます。

このような事態を引き起こさないために、隣の国から輸入するロボットの価格を調整するのが関税の役割です。
輸入されたロボットは価格が高くなるので、「それなら自分の国のロボットを買うか」と思う人が増えることを期待しています。
国の収入増
関税には、国の収入を増やすという目的もあります。
「税」という言葉が付いていることからも分かるとおり、関税も税金の1つです。関税をかければ、その分が国の収入になります。
経済産業省の2024年版不公正貿易報告書によると、2022年度の日本の関税収入額はおよそ1兆円、国税収入全体の約1.4%にあたるそうです。
決して安くはない金額ですが、先進国ではそこまで重視されておらず、産業の保護を目的として関税が使われるケースが一般的です。
関税は誰が負担する?
関税も税金の1つなので、税金を負担して国に納める人がいます。では、誰が関税を負担するのでしょうか。
ここが勘違いしている人が多いポイントで、関税を負担するのは物を輸入する人です。つまり、物を輸入する人が自分の住んでいる国に税金を納めることになります。
関税がかかる商品を輸入したとき、輸入した人が取るであろう行動は以下の3パターンです。
- 販売価格に上乗せする
- 輸出する人に負担してもらう
- 自分で負担し続ける
輸出する人に負担してもらえればラッキーですが、向こうも商売なので難しいでしょう。「それなら別の国に売るからいいよ」と言われてしまうかもしれません。
自分で負担し続けるのであれば購入する人はラッキーですが、儲けがなくなってしまうので商売として継続が難しくなってしまいます。
となると、必然的に選ばれるのが「販売価格に上乗せする」という選択肢。輸入された商品を売るときや、輸入されたものを使って作られた商品を売るときに、関税分を上乗せして損失をカバーします。
つまり、関税は物を輸入する人が負担する税ですが、実際に負担するのは輸入された商品を買う人というわけです。
関税が暮らしに与える影響
関税は自国の産業の保護という重要な役割がありますが、かけすぎると景気が悪くなる可能性があります。
そもそも、景気が良い状態というのは、お金の流れが活発な状態を指します。みんなが物をいっぱい買うから企業も儲かり、給料が増えるのでもっと買い物をするようになる。これが景気が良い状態です。
しかし、関税がかかるとどうでしょうか。関税がかかった商品は価格が上がるので、これまでのように自由に買えなくなる人が出てきます。
こうなると、企業の売り上げも当然落ちてしまいます。企業の売り上げが落ちると給料が減るので、ますます買い物をする人が減ってしまう。これが景気が悪くなる悪循環です。
さらに、関税で困るのは、関税がかかる商品を輸入する側だけではありません。輸出する側にも影響が出ます。
商品を輸出する人からすれば、関税がかかる前は売れていた商品が売れなくなってしまいます。これも同様に、景気が悪くなる悪循環に突入するおそれがあります。
つまり、関税は物を輸出する側の国にも輸入する側の国にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
「自分が買うものには高い関税がかかってないから」、「自分の住んでいる国は関税が高くないから」で済まされる問題ではなく、巡り巡って影響を受ける可能性があります。
関税は他人事じゃない
連日取り上げられる関税のニュースを見ているとどこか他人事のように思えますが、実は我々の生活に大きな影響を与える可能性があります。
とはいえ、他国の関税政策は我々にどうにかできる問題ではないのも事実です。この先どうなるかは世界中のほとんどの人が分からないと思うので、今は静かに見守りましょう。
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