皆さんは、iDeCoという言葉を聞いたことがありますか?
税制上の優遇措置が受けられるお得な制度なのですが、どんな制度なのかよく分からない人もいれば、そもそもiDeCoなんて初めて聞いたという人もいるかと思います。
この記事では、iDeCoの概要やメリット・デメリット、NISAとの違いなどを紹介します。
iDeCoとは
iDeCoとは、自分でお金を積み立てて運用していく年金のことです。
iDeCoの仕組み
iDeCoは、大きく以下の3ステップに分けられます。
- Step 1掛金を積み立てる
金融機関を選び、自分で設定した金額を積み立てる
- Step 2自分で運用する
自分で運用方法を選び、運用する
- Step 3受け取る
60歳以降になったらお金を受け取る
日本には国民年金や厚生年金のような公的年金がありますが、それらと組み合わせることで老後生活をより豊かにすることを目的としています。
iDeCoの特徴
iDeCoは年金の一種ですが、我々が「年金」と聞いて想像する年金である国民年金や厚生年金とは性質が異なります。
特に大きな違いは、自分の年金を自分で運用することです。
国民年金や厚生年金は、実は私たちが支払ったお金を運用して増やしてくれている人がいます。
たとえば、国民年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人は、2001年から2024年度第2四半期までで153兆6,431億円の収益を得ています。(参照:2024年度第2四半期運用状況(速報))
それに対して、iDeCoはお金を積み立てるだけではなく運用方法も自分で選ぶ必要があります。公的年金であれば他の人がやってくれる運用を自分でする点が大きな違いです。
iDeCoに加入できる人
iDeCoは、20歳~65歳未満の国民年金被保険者であれば基本的に加入できます。
ただし、一部例外があるので不安な人はiDeCo公式サイトで確認すると良いでしょう。
また、iDeCoは職業や企業年金の有無によって拠出限度額(積み立てる金額の上限)が変わります。
たとえば、自営業の場合は月6万8,000円まで、会社員で会社に企業年金がない場合は月2万3,000円までです。たくさん積み立てたい人はiDeCo公式サイトで確認しておきましょう。
NISAとの違い
iDeCoとNISAはどちらも資産形成のための制度ですが、税制優遇が受けられるという共通点があるだけで実はかなりの別物です。

色々と異なる点がありますが、とりあえずiDeCoは年金だから原則途中で引き出せないことだけ覚えておけば大丈夫です。
iDeCoのメリット
iDeCoの最大のメリットが、税制優遇です。しかも、iDeCoは3つも税制優遇が受けられるので、今だけでなく老後も節税ができます。
掛金が全額所得控除の対象になる
iDeCoで積み立てたお金は、小規模企業共済等掛金控除という所得控除の対象になります。
会社員として働いている人は、年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」という書類を毎年書かされていると思いますが、あの書類にiDeCoをやっていることを書くと税金が安くなります。

たとえば、年収300万円の会社員が毎月2万3,000円ずつiDeCoで積み立てた場合、所得税と住民税合わせて年間4万円ほど税金が安くなります。
将来のためにお金を積み立ててるだけで手取りが増えるなんて、かなりお得じゃないですか?
自分の税金がどのくらい安くなるのか知りたい人は、JIS&T(iDeCoの記録を管理している会社)の節税メリットシミュレーションをどうぞ。
運用益が非課税
iDeCoで運用しているお金が増えて儲かった場合、儲かった分にかかるお金も非課税になります。

普通なら利益に対して20.315%が税金として引かれてしまいますが、iDeCoなら税金がかかりません。儲かった分は全部あなたのお金です。
ちなみに、NISAも同じように運用益が非課税です。しかし、NISAはどんなに投資しても所得控除の対象にはならないので、節税効果という点ではiDeCoに軍配が上がります。
受け取り時にも控除
iDeCoで積み立てて運用したお金は、受け取る際にも控除が受けられます。

年金として分割して受け取るのであれば公的年金等控除、一時金として一括で受け取るのであれば退職所得控除の対象となり、一定額までは税金がかかりません。
iDeCoのデメリット
iDeCoは節税メリットが大きいものの、デメリットも存在します。
60歳になるまでは原則引き出せない
前述のとおり、iDeCoは年金なので60歳になるまでは原則引き出せません。
突然のケガや病気など、万が一の事態で急にお金が必要になった場合であっても引き出せないので、iDeCoとは別に一定額の預貯金を用意しておく必要があります。
また、最初にiDeCoで積み立てを始めてから10年以上経っていないと60歳から受け取れない点も注意が必要です。
運用結果によってはお金が減る可能性がある
iDeCoは自分で運用する年金であり、自分の運用結果によっては積み立てた金額よりもお金が減ってしまう可能性があります。
運用した結果お金が減ってしまっても誰も補填してくれないので、運用商品を選ぶ際には注意しましょう。
どうしてもお金を減らしたくない場合には、元本保証という積み立てた金額を確保してくれる商品を選ぶのがおすすめです。
手数料がかかる
iDeCoで積み立てをすると、わずかながら手数料がかかります。
主な手数料は、口座を開設した時の手数料や、掛金の積み立て中に毎月かかる手数料などです。
とはいえ、口座開設時にかかる手数料は3,000円弱、毎月の手数料は200円弱~なので、それほど高いわけではありません。
今後制度が変わる可能性がある
これは見落としがちなポイントですが、iDeCoは今後法改正によって制度が変わる可能性があります。
2001年の制度開始以降、iDeCoは加入対象者の拡大など制度の変更をしてきました。今後も時代に合わせた変更がおこなわれると予想されますが、それが利用者にとってプラスの変化ばかりとは限りません。
実際に、2025年度の与党税制改正大綱ではiDeCoを一時金として受け取る際の控除に関するルールが変更になる旨が記載され、SNSでは「改悪」との声が上がりました。
もし30歳からiDeCoを始めたら、お金を受け取れるのは早くても30年後です。その30年の間に制度が変わり、今ほどお得ではなくなっている可能性も考慮しておきましょう。
iDeCoの始め方
では、iDeCoを始めたいと思ったら、何からどうやって始めれば良いのでしょうか。
まずは加入できるか確認
あたりまえのことですが、まずはiDeCoの加入区分を確認しましょう。
とはいえ、大半の人は加入できるので、そんなに身構える必要はありません。
掛金の上限を確認&掛金の決定
iDeCoは加入区分によって掛金の上限が異なるため、自分の掛金の上限を確認しましょう。
iDeCo公式サイトで確認する方法もありますが、前述の節税メリットシミュレーションで確認しても大丈夫です。
上限を確認できたら、その範囲内で積み立てる金額を決めます。
掛金は月5,000円から、1,000円単位で増やせます。60歳まで引き出せないので、普段の生活に支障が出ない金額にすることをおすすめします。
ちなみに、掛金の金額を変更したい場合は年に1回だけ変更できます。積み立てが難しくなった場合は停止もできるので、生活が苦しくなったら無理せずに積立金額を変えましょう。
運用商品のタイプを知る
iDeCoは自分でお金を運用する必要があるため、運用方法を決めなければなりません。
まずは、iDeCoで運用できる金融商品のタイプを理解しましょう。

iDeCoで選べる運用商品を大きく分けると、元本保証型と元本変動型の2種類に分けられます。
元本保証型は、支払ったお金が全額返ってくることが確定していて、そこに利息が上乗せされる商品です。
iDeCoでは、定期預金や保険商品などがこれにあてはまります。
リスクが少ないので安心ですが、リターンもそんなに大きくないので、物価上昇のスピードに負ける可能性があるのがデメリットです。
一方、元本変動型は、運用状況によって元本が変動する商品です。上手くいかないと支払ったお金より少なくなってしまうリスクがあります。
iDeCoでは、投資信託がこれにあたります。
お金が減るというリスクがありますが、うまくいけば元本保証型よりも高い利益が出せる可能性があるのがメリットです。
ハイリスク・ハイリターンと聞くと怖くなってしまうかもしれませんが、投資信託は運用のプロに運用を任せられるので、自分でするべきことはそれほど多くありません。
運用の方向性を決める
運用商品についてなんとなく理解できたら、自分がどんな方向性で運用するのかを決めましょう。
重要なポイントは、リスクをどこまで許容するかです。
絶対にお金を減らしたくないのであれば、元本保証型を選ぶのがおすすめです。
多少リスクがあってもお金を増やしたいのであれば、元本変動型を選ぶのがいいでしょう。
もちろん、元本保証型と元本変動型を組み合わせて運用するのも手段の1つです。
投資の世界では複数の資産に投資してリスクを減らすという考え方があるので、元本変動型の商品を複数組み合わせてリスク回避する方法もあります。
iDeCoの運用方法に正解はないので、自分の納得する方法を選びましょう。
金融機関を決める
さて、遂に金融機関を選んで積み立てのスタートです。
金融機関を選ぶ際には、自分の運用したい商品があるかどうかをまず確認しましょう。
iDeCoの運用商品は金融機関によって違うので、事前に流し見だけでもいいのでしておいた方がいいです。たとえば、金融機関によっては元本保証型の商品を扱っていないケースもあります。
また、手数料も確認しておきたいポイントです。金融機関によっては1か月で300円以上変わるケースもあります。
お任せする金融機関が決まったら、金融機関のホームページや窓口などで手続きをすれば加入手続きは完了です。
iDeCoで節税&豊かな老後を
節税しながら老後資金を積み立てられるiDeCoは、豊かな老後を支える重要な資産です。
先の見えないこんな時代だからこそ、今からiDeCoで積み立てを始めてみませんか?
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