若者と呼ばれる年齢の皆さんは、「社会保険料を払ったって将来年金なんて貰えないんだろうな」と思っている人も多いのではないでしょうか。
実は「将来年金を貰えない」は大きな間違いで、日本という国が根本的にどうにかなってしまわない限り年金制度は破綻しません。
信じられないと思う人も、まずはちょっとだけ話を聞いていってください。
年金が貰えなくなることはない
将来どんなに少子高齢化が進んで若者が減っても、年金制度が破綻して何も貰えなくなる可能性はほとんどゼロに近いと言えます。
年金は現役世代が支えている

日本の公的年金は、高齢者に給付されている年金を現役世代が支える仕組みで、「賦課方式」と呼ばれています。アメリカやイギリスなど、他の多くの国でも採用されている方式です。
この賦課方式の良いところは、現役世代がいる限り年金が受け取れることです。ある日突然自分より若い日本人が一斉に消えたりしない限り、制度は破綻しません。
年金の原資は現役世代の保険料だけではない
現役世代が年金を支えていると聞くと、「将来的に貰える金額が大きく減るんじゃないか」と思う人もいるでしょう。
実は、年金の原資のうち現役世代が払う保険料は7割ほどで、残りは税金や積立金から支出されています。
この積立金は運用してどんどん増やされていて、運用以来153兆円以上の収益(2023年度時点)を上げています。
ある日日本という国が崩壊して無政府状態になり税金や積立金が使い込まれない限り、制度は破綻しません。
貰える金額が減ることはある
年金として貰えるお金がゼロになることはありませんが、貰える金額が減る可能性はあります。
マクロ経済スライド
マクロ経済スライドとは、社会情勢に合わせて年金の支給額を調整する仕組みです。別に名前は覚える必要がないのですが、響きが必殺技っぽくてかっこいいので紹介しました。
「長生きの人が増えてきて年金支給額が増えてきたな」、「現役世代が減ってるな」と判断したら、現役世代の負担を減らすために支給額を減らします。
もともと年金支給額は賃金や物価の上昇に応じて増えていきますが、もし物価が1.5%上がっても、マクロ経済スライドによって年金支給額の上昇率は0.6%に抑えられるなどの調整がされます。
そのため、現在の若者が年金を受け取る頃には、「高齢者が多いけど現役世代は少ない」という理由でマクロ経済スライドによる調整がおこなわれ、貰える年金額が減ってしまう可能性があります。
受給年齢の引き上げ
現在公的年金は65歳から受け取れますが、この年齢が引き上げられる可能性があります。
実際に、かつて厚生年金は60歳で受給できましたが、2000年の法律改正で65歳に引き上げられました。
仮に受給年齢が5歳引き上げられた場合、65歳から69歳までの間に受け取れたであろう年金額の分だけ損をしてしまいます。
年金は払わなくていいのか
どうせ受け取れる金額が減るのであれば、年金の保険料は払わずに自分で貯金していた方がいいと思う人もいるかもしれません。
しかし、年金の保険料を払わないのはかなりリスクが高いので、ちゃんと払うことをおすすめします。
財産が差し押さえられる
公的年金(国民年金と厚生年金)の保険料を納めるのは国民の義務であり、保険料の未納が続くと財産が差し押さえられる可能性があります。
もし支払いが難しい場合は保険料の免除や猶予ができるので、財産が没収される前に手続きをしましょう。
保険料の免除や猶予については、日本年金機構のホームページを確認してください。
受け取れる年金の額が減る
公的年金のうち、国民年金は保険料を納めた月数によって受け取れる金額が決まります。
2025年3月現在、20歳から60歳まで40年間納め続けた場合の国民年金の支給額は月額6万8,000円です。
それに対して、10年しか納めていない人は月額1万7,000円しか受け取れません。
そもそも、国民年金は10年以上保険料を納めていないと受け取る権利すらないので、とりあえず10年は保険料を納めておいた方が得です。間に合わなさそうな人は後払い(追納)という手もあります。
保険料の追納については、日本年金機構のホームページを確認してください。
障害年金が受け取れなくなる
「年金」と聞くと老後に受け取るお金のイメージが強いかもしれませんが、実は障害を持った時に受け取れる年金もあります。
もしもの時に役に立つ障害年金ですが、初診日の時点で一定回数保険料を納めていないと受給できません。
今は必要なくても、本当に必要になった時に後悔する可能性があります。
年金で損をしないためには
では、年金で損をしないためには、若者はどうすればいいのでしょうか。
長生きし続ける
将来が見えないこの世の中で若者が年金で損をしないためには、とにかく健康で長生きし続けることが重要です。
公的年金は生きている限りずっと受け取れるので、生きていればいつかは元を取れます。極端な話、数百年生きていれば年金額が減っても間違いなく元を取れます。
年金で損をしたくない若者よ、今から健康維持に努めましょう。長生きすればするほど年金がたくさん受け取れて得です。
60歳以降も働く
毎日地を這うような思いで仕事をしている我々には信じがたい話ですが、世の中には生きがいのために働いている元気なシニアがいます。すごい話ですね。
こんな元気なシニアのように働くと、最終的に受け取れる年金の額が増えます。厚生年金保険料は70歳まで納めることができ、納めた額が増えると受け取れる厚生年金の額も増えるからです。
60歳以降も働くには、やっぱり健康で長生きする必要があります。定年退職後に「家にいても暇だし働こうかな」なんて言えるくらい元気なシニアになれるといいですね。
ちなみに、働きまくって収入が一定額を超えると厚生年金の支給がストップされてしまうので、年金で損をしたくない人は定年後に働き過ぎないように注意してください。
繰り下げ受給をする
年金の支給開始は原則65歳からですが、受け取れる年齢を早めたり遅くしたりできます。受け取りを早めるのが繰り上げ受給、受け取りを遅くするのが繰り下げ受給です。
早めに受け取ると年金額が減るのに対し、受け取りを遅くすると年金額が増え、最大である75歳まで遅くすると年金額が84%も増えます。
仮に75歳まで繰り下げた場合、10年間は年金が受け取れませんが、86歳まで生きれば元が取れます。そこそこ現実的な数字だと思いませんか?
繰り下げ受給で得をするなら、とにかく長生きし続けることが重要です。今から食事に気を遣って適度な運動をして、納めた分のお金を回収してやりましょう。
年金は減りはするかもしれないがなくなりはしない
今後ますます少子高齢化が進むと、受け取れる年金の額は減る可能性があります。しかし、よっぽどのことがない限りなくなる可能性はありません。
我々にできるのは、健康維持に努めて長生きをすることと、「よっぽどのこと」が日本に起きないよう願うことです。後者のためには選挙にちゃんと行って、それ以外の日は前者の健康維持と長生きを頑張りましょう。
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