今年から社会人になった人のなかには、「財形貯蓄をやりませんか」という勧誘を受けた人もいるのではないでしょうか。
なにやらお得な制度だということはやたらと強調されるけれど、得体の知れない制度に大事なお金を預けるのは怖いものです。
せめて財形貯蓄がどんな制度か知ってから使うかどうかを決めましょう。
財形貯蓄には3種類ある
財形貯蓄とは、給料から天引きされる貯金のことです。月々の給与とボーナスから労働者が自分で決めた金額が天引きされて、銀行などに貯金されます。
そんな財形貯蓄には、お金を貯める目的に応じて3つの種類があります。
一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、どんな目的にも使える貯蓄です。3年以上積み立てる必要があり、1年経過すれば自由に引き出せます。
車を買ったり旅行に行ったり、何にでも使えるうえに、申し込むときの年齢制限もありません。
財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、住宅の購入やリフォームのための貯蓄です。5年以上積み立てる必要があります。
申し込めるのは55歳未満の人に限定され、家を買ったりリフォームしたりするタイミングで貯めたお金が受け取れます。
財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、退職後の生活資金のための貯蓄です。5年以上積み立てる必要があります。
申し込めるのは55歳未満の人に限定され、貯めたお金は60歳以降に年金として受け取れます。
財形貯蓄のメリット
財形貯蓄は勧誘時にやたらとお得であることを強調されますが、具体的にどのような点がお得なのでしょうか。
主なお得ポイントを紹介します。
強制的に貯金ができる
財形貯蓄は給料天引きなので、会社が強制的に先取り貯金をしてくれます。
貯金ができない人のなかには、「余ったお金を貯金しよう!」と意気込むものの手元に全くお金が残らない人も少なくありません。
無理やり先取り貯金を始めてみても、給料日前につい先取り貯金に手を付けてしまったという経験がある人もいるのではないでしょうか。
そんな人でも、財形貯蓄なら給料が振り込まれた時点で貯金が完了しているので、貯金の習慣が強制的に身につきます。
引き出すには会社への申請が必要になるなど普通の口座よりも面倒なので、衝動買いのためについ先取り貯金を引き出してしまう心配もありません。
金額は1,000円単位で設定できるため、貯金ができない人はまずは月1,000円から始めてみるのも良いでしょう。
利子等が非課税になるケースがある
財形貯蓄のうち、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は一定の条件を満たせば利子が非課税になります。
銀行などに預けたお金は利子がつくので少しずつお金が増えていきますが、この利子には20.315%の税金がかかります。1万円増えたら2,000円ちょっとが税金として引かれる計算です。
しかし、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は元利合計550万円まで税金がかかりません。元利合計というのは、自分が貯金したお金と利子で増えたお金の合計のことです。
さらに、財形年金貯蓄は年金として受け取るときにも所得税が非課税になります。ダブルで非課税になるので、確かにお得ですね。
財形住宅融資が利用できる
財形貯蓄のうちどれかを1年以上利用していて50万円以上の残高があると、住宅を購入・リフォームする際に財形住宅融資が受けられます。
財形住宅融資は住宅ローンの1つですが、一般の住宅ローンよりも金利が低いケースが多いほか、手数料がかからないなどのメリットがあります。
財形貯蓄のデメリット
ここまで聞くと欠点のない素晴らしい制度のように思えるかもしれませんが、財形貯蓄にもちゃんとデメリットがあります。
会社によっては利用できない
財形貯蓄は会社に天引きしてもらう制度なので、財形貯蓄を導入していない企業では利用できません。
まずは会社に財形貯蓄の制度があるかどうかを確認しましょう。
商品の選択肢が少ない
財形貯蓄は会社が指定した金融機関でしか利用できず、選択肢がそれほど多くありません。
「条件が合わない」、「思ったよりお得感がない」と思っても、他の選択肢がないので選ばざるを得ないのがデメリットです。
条件が細かい
財形貯蓄の面倒なところが、利用するための条件が細かく設定されている点です。
たとえば、一般財形貯蓄は3年以上積み立てる必要があるうえに、貯金を始めてから1年以上経たないと引き出せないので、1年以内に必要になるお金を貯金するのには向いていません。
それ以外にも、住宅の購入やリフォーム以外で財形住宅貯蓄のお金を引き出すと課税されるなどの注意点もあるため、契約する前に確認が必要です。
お金が増えにくい
財形貯蓄は「こんなに金利が高いんですよ!」と積極的にアピールするものも多くありますが、あくまで銀行の普通預金と比較した場合であり、そこまで利子がつくわけではありません。
財形貯蓄でお金を貯めているから大丈夫だと思い込んでいると、物価の上昇にお金の増え方が追い付かずに目減りしていくかもしれません。詳しくは以下の記事をどうぞ。
お金を増やしたいのであれば、NISAやiDeCoなどを活用して自分で資産運用をした方が良いでしょう。資産運用はお金が減るリスクもありますが、増える可能性は財形貯蓄よりずっと高いです。
財形貯蓄はお金を増やすのではなく、あくまでも確実にお金を貯めるための手段だと考えることをおすすめします。
財形貯蓄に向いている人・向いていない人
財形貯蓄に向いているのは、面倒くさがりでなかなか貯金ができない人です。
「先取り貯金が大事なのは分かっているけれど面倒くさい」、「勝手にお金が溜まっていく制度があればいいのに」と思う人には、財形貯蓄はうってつけです。会社が勝手に貯金してくれます。
それに対して、自分で計画的にお金を貯めて資産運用できる人には財形貯蓄はあまり向いていません。
財形貯蓄をやってはいけないわけではありませんが、やってもあまりメリットを感じられない可能性があります。お金が貯まる以外の点にメリットを見出した場合は利用しても良いでしょう。
めんどくさがりこそ財形貯蓄をやろう
貯金は面倒なものです。自分だけでは頑張れないめんどくさがりさんは、財形貯蓄を活用して会社に天引き貯金をしてもらえれば自動的に貯金ができます。
自覚のあるめんどくさがりさんは、財形貯蓄を初めてみてはいかがでしょうか。
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