「将来のためにお金を貯めておきましょう」と言われても、想像ができないものに対しては計画が立てにくいものです。その例の1つが親の介護に関するお金ではないでしょうか。
親が元気なうちは想像しにくいものですが、介護が必要になる日がいつか来るかもしれません。いつ来るかわからないとはいえ、無策のまま待つのはあまりにも無防備すぎる気もします。
親の介護ってそもそもいくらかかるんだろう、今からできることはあるんだろうか、そんな疑問に答えます。先の見えない未来にそっと懐中電灯を置きにいきましょう。
介護にかかるお金は人それぞれ
結論から言ってしまうと、介護にかかるお金は人によって異なります。そのため、一律に「介護にかかるお金はこれだけ!」と言い切ることはできません。
どうして介護にかかるお金は人それぞれなの?
介護にかかるお金が人によって異なる主な理由には、以下の2点があります。
- 人によって必要なサービスが違う
- サービスによって費用に幅がある
「介護が必要な状態」と一括りにしても、その状態はさまざまです。杖を使えば歩いて生活できる人もいれば、自力でベッドから起き上がれない人もいます。
自力でできることやサポートが必要なことが異なれば、必要な介護サービスも異なります。その結果として介護費用が変わってくるというのは、理解しやすいのではないでしょうか。
また、介護サービスにも多くの選択肢があり、それぞれの費用に差がある点も理由の1つです。高級な介護サービスもあるので、お金をかけようとすればいくらでもかけられます。
たとえば、俗に言う「高級老人ホーム」に入居するには、入居一時金が3,000万円程度、それに加えて月30万円程度の利用料がかかります。すごい世界ですね。
介護にかかるお金の総額
では、「介護にかかるお金は人それぞれ」という前提を踏まえて、介護に必要なお金の総額を見ていきましょう。
公益財団法人生命保険文化センターがおこなった「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかる月額費用の平均は9万円です。
同じ調査では、現在介護中の人も含めた介護期間の平均が55か月(4年7か月)なので、介護には総額で500万円ほどかかることになります。たしかに高額ではありますが、途方もない金額ではないと感じませんか?
実は日本には介護保険という制度があり、要介護・要支援と認定されると介護サービスの自己負担が原則1割で済む(※一定額を超えると全額自己負担)うえに、高額になりすぎた場合は払い戻しも受けられます。
この介護保険制度のおかげで、介護が必要になっても少ない自己負担で介護サービスを受けられるわけです。
介護が必要な人はどのくらいいるのか
ちなみに、介護が必要な人は日本にどのくらいいるか知っていますか?
厚生労働省の「令和5年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護・要支援と認定された人は令和5年度で708万人、うち65歳以上の人が695万人です。
そう言われてもピンとこない人のために割合を出すと、65歳以上のうち要介護・要支援と認定された人は19.4%です。およそ5人に1人が介護が必要だと認定されている計算になります。
そこまで多くないと思うかもしれませんが、高齢になればなるほど介護が必要になるリスクは高くなるので、年齢が上がると割合が徐々に高くなる点には注意が必要です。
実際に、75歳以上になると要介護・要支援の人の割合は31%まで上がります。およそ3人に1人まで増えることを踏まえると、かなり身近な問題だと感じられるのではないでしょうか。
親の介護費用は誰が出すのか
では、我々子どもは親の介護費用とどう向き合えばいいのでしょうか。
介護費用は自分で出すのが原則
結論から言うと、自分の介護費用は自分で出すのが原則です。そのため、親の介護にかかるお金は親の年金や貯金でまかなうことになります。
親の介護が必要になった時、子どもは独立していることも少なくありません。自分の子の教育費、住宅ローンの支払いなどの出費に介護費用も重なると、自分の家計に悪影響が出てしまいます。
ちょっと安心した人、いるんじゃないでしょうか。わかります。だって500万円ですもんね。これだけあればいろんなものが買えますもん。
とはいえ、親が介護費用を用意できないケースもあります。そのような場合には自宅の売却などで資金調達をすることになりますが、それでも足りなければ子どもが不足分を出す必要があるでしょう。
民法では扶養義務が定められているため、親が子を養うように、子にも親を養う義務があります。とはいえ、自分の生活に余裕がない場合に親の介護費用を出せなくても扶養義務違反にはならないので、そこまで心配する必要はありません。
介護費用以外のお金に注意
親の介護費用について子どもが心配することはそこまでありませんが、見落としがちな介護費用以外のお金に注意が必要です。
もっとも注意したいのが、親の介護のために給料が減るケースです。自宅での介護や施設への送り迎えで勤務時間が減った結果、フルタイムで働いていたときより給料が減ってしまうケースが少なくありません。
親の介護のために自分の生活に余裕がなくなってしまっては元も子もないので、自分の生活に無理がない範囲でどんな介護ができるのかを考えておくと良いでしょう。
介護費用が足りなかったらどうする?
介護費用が足りない場合、まずは利用する介護サービスの見直しが必要です。
この記事の冒頭で、介護費用が人によって異なるのは
- 人によって必要なサービスが違う
- サービスによって費用に幅がある
の2点が主な理由だと説明しました。
このうち、1点目の「必要なサービス」は見直すのが難しいのが一般的です。必要なサービスはその人の状態に依存するので、安いからといってその人に適さないサービスを選ぶわけにはいきません。
そのため、介護費用を減らすには同様のサービスの中で安いものを選ぶことが重要になります。
たとえば、特別養護老人ホームなどの公的な施設は民間の施設よりも費用が安いので、介護費用が用意できない人でも入居しやすくなっています。
それでもお金が足りないのであれば、ケアマネジャーなどの介護の専門家に相談しましょう。介護サービスには公的な支援がたくさんあるので、専門家に相談すれば何かしらの解決策を提示してくれるはずです。
今から介護サービスのあれこれを詳しく勉強しておく必要はないので、困ったら助けてくれる人が公的機関にいることだけは覚えておきましょう。
親が元気なうちに話し合っておこう
親の介護の問題を解決するもっともシンプルかつ合理的な方法は、親と介護について話をすることです。
とはいえ、親に突然面と向かって「お前が介護が必要になったらどうするか話し合うぞ」なんて言いにくいですよね。言えるよって人はこの次の段落は飛ばしてもらって大丈夫です。
この手の話の切り出し方で有効なのは、「なんか聞いた話なんだけど」と興味が薄いふりをすることです。友人から聞いたとか、SNSで見たとか、とりあえず話題に上げてますというオーラで乗り切りましょう。
話し合っておきたいポイントは2点あります。
どんな介護を受けたいか
介護が必要になったらどうしたいのか、親の考えを聞いておきましょう。特に大事なのが、家で生活したいのか施設で暮らしたいのかの2択です。
家での介護は施設に入居するよりも安く済みますが、一緒に住んでいる家族に負担がかかります。メリットもデメリットもありますが、やはり住み慣れた我が家で暮らしたいと考える人も多いです。
それに対して、施設で暮らしたいと考える人も一定数います。費用は家での介護よりも高くなりますが、プロの介護サービスを24時間受けられるうえに、家族に迷惑をかけているという罪悪感も軽減されます。
在宅か施設かという2択はどちらが正解と一律に決まっているわけではなく、本人が望んだ方が正解です。介護が始まると本人の意見を聞くのが難しいケースもあるので、あらかじめ聞いておきましょう。
介護費用はどの程度あるか
どんな介護を受けたいかと合わせて、介護にかけられるお金がどの程度あるかも確認しておきましょう。介護サービスの希望がわかれば介護費用がどの程度かかるかもわかってくるので、使えるお金との差がどのくらいあるかを確認できます。
すでに取り上げた公益財団法人生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、在宅での介護にかかる費用は5万2,000円なのに対し、施設では13万8,000円と2倍以上の差があります。
受けたい介護サービスの費用に対してお金が足りない場合、諦めるしかないと思うかもしれませんが、介護が始まる前ならまだ間に合います。元気なうちにお金を用意しておけばいいのです。
代表的な例が、自宅を活用した資金の調達です。たとえば、自宅を担保にするリバースモーゲージという制度を使えば、親が自宅に住み続けながらお金を借りられます。
また、親がまだ現役で働いている場合は、退職金を介護資金として取っておくのもいいでしょう。まとまったお金が入ると豪快に使ってしまう人もいますが、介護費用が不足する可能性があると分かっていれば浪費も抑えられるはずです。
親が元気なうちであれば資金調達はいくらでも方法がありますが、介護が突然始まってしまうと考えている暇なんてありません。元気なうちに考えておきましょう。
心配しすぎる必要はないけど関心は持っておきたい
介護はとにかく公的支援が充実しているので、親のお金が足りないかもしれないと過度に恐れる心配はありません。
とはいえ、親の介護の問題に全くの無関心でいるのは無防備すぎます。75歳以上の3人に1人が介護が必要になる時代、介護は決して他人事ではなく、自分の身にも起こるかもしれない問題です。
お金の心配ももちろん大事ですが、今できる一番大事なことは親と介護について話をしておくことです。たまには親御さんに顔を見せて、親子で話してみませんか。



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